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上田久美子退団に捧ぐ。美しい嘘を書けなくなった、最も美しい作品を書く人へ。~全9作品、好き勝手しゃべってます。~

くーみん、「鎌倉殿の13人」見てますか?(と、一方的に大河ドラマの感想LINEを打ちたい今日このごろ)

 

 ということでみなさまどうもお疲れ様です!4月が過ぎもう5月です!(知ってるがな!)もうなんか…30代迎えてから時の流れが5倍速くらいで流れていくの、本当になんで?って思う…(これ40代になったら10倍速くらいになるって噂で聞いたんだけど、それってマジ?)

 あと、GWどこも行けないウーマン祭り絶賛開催中ですけどそれにしたって公演中止はまじでヘコむ。

 

 そんな中、私がいうまでもございませんが宝塚歌劇団で活躍していた宝塚歌劇団きっての芥川賞作家」(←※言ってるの私だけ)こと座付き演出家・上田久美子さんがこの度退団されました。デビューから約10年かぁ~…。早かったような、それでも10年いてくれたんだと思うような。

 なんだろう、超個人的な感想としては「サパ」あたりで「もう、くーみんがやりたいことはここ(タカラヅカ)ではできないんだろうな」というようなざっくりとした感想を持ったので、「寝耳に水過ぎて聞いてないよ!!」というほど驚くことではなかったです。

 このニュースを聞いて、その瞬間思い出したのは私が上田久美子作品の中で最も好きな「翼ある人びと」の旅立つブラームスに対し叫ぶ、最後のクララのセリフ。

 「あなたは自由になるのよ!」

 …上田さん、自由になったんだなあ。きっと、自分の好きなものを好きなだけ創れる世界に、トランクひとつだけ持って旅立つのでしょう。

 安定した収入?NO!

 枠の範囲内で楽しむ?NO!

 座付き演出家としての名誉?つまらんわ~~~!!

…そんな上田さんの声が聞こえてきそう。

 

 私、正直彼女の崇拝者でもなんでもなく、彼女の作品はすべていいとか素晴らしいとか間違いなくナンバーワンとか肯定する気はあんまりないです。なんなら、中村一徳先生の作品のほうが全肯定してもう全部大好き!!って大声でいえる(笑)。(全く違う土俵過ぎて誰もそのふたり比べない)

 

 ただ、本当に美しい舞台をつくるクリエイターだった。

 だから、寂しいとは思う。とても。もうあの美しい世界をタカラヅカで見れないなんてとても寂しいと。

 だけど、悲しいとは思わない。きっとこれから彼女は私達が見たことない世界を見て、新しい世界を創るのだから。世界にきっとその才能を見せつけて、「私、この人のタカラヅカの舞台知ってる!」と誇れるような人物になってくれるだろうから。

 繰り返してしまうのだけど(笑)特に私は彼女の作品の信者でもなく、崇拝しているわけでもないただのタカラヅカファンなんですけど、でも!

 でも彼女にはとってもたくさんの美しい作品を見せていただいた、感謝がある。

 おごがましいかもしれないけど、いらんかもしれないけど、それでも!

「それでもあなたはやっぱりすごい!!」と思いっきり背中叩いて「だから本当に今までありがとう!!!」という言葉とともに、世界に送りだしたい!!※繰り返すけど、あたしただのヅカヲタです。

 

 …なーんて大きな声で言ってしまったが、シンプルに言うとただのヅカヲタが世界の大海原に漕ぎ出す天才に向けてただしゃべりたいだけの企画です。題して

「くーみんやっぱりあんたはすごかった!!~もうまじで美しかった全記録9作品~」

(ひねりもなく、心からの言葉をそのまま表記しました)(美しい日本語的になにひとつ正解していないところがこの企画に合っているのか書いてて不安だ…) 

今作品一覧を見て、驚愕している。だいたい人より3倍速で生きている自負のある私(冒頭より早くなってるやんけ)人より10倍くらい早く感動を覚えるけれど人より10倍くらい早く忘れる自負もある(断言)。なのに…この一覧見ても

 「この作品どういうんだっけ?」っていうの一個もない…!!(唖然)もうこの時点でくーみん、人類初快挙です!!!(真顔)

 …いや、今までの文章でツッコミどころ(あくるさんの記憶力において)15個位あるけどもうまあ、いいや。

 

 

演出家デビューですでに「バケモン演出家」~月雲・翼ある(’13~’14)

デビュー作■月組「月雲の皇子」(2013年)

 

 ガッチガチの日本の昔話。バウの評判を聞いて、どうしても見たくてでもバウがかすりもしなくて、でもどうしてもどうしても見たくてたまらず。仕事休んで観に行ったの、この公演が初めてでしたね(それから仕事は休めることを理解したあくるさん)

 幕間になった瞬間、立てなくなるという経験はムラで人生初のタカラヅカ観劇した以来だったかも。ずっとこの物語のことを考えている。脳内にこの世界のことしかなかったということ、私の人生ではなかなかない。(いつでもあらゆる煩悩と戦い続けているのでね…)

 この作品にはいろんなことを教えてもらった。っていうか知らんことだらけだった。

 こんな珠城りょうは知らなかった!

 こんな鳳月杏も知らなかった!!

 咲妃みゆちゃんに至っては、こ、これが噂のーーー!!!!という驚愕の連続。「ロミジュリ」新公と「春の雪」でなんかヤバい(言い方)娘役出てきたという噂は聞いていたけどもう~~ゆうみちゃんの透明感。透けているんじゃ…?って思うほど、だけどものっすごい存在感で。1幕なんてまるまるしゃべらないのに。その衝撃たるや、人生でこんなことあるんだって思うしなんなら私よく日帰りで帰ってこれたなと思う。銀河劇場って行くまでにモノレール乗るんですよ!(だから?!)

 すごくよく覚えているのは、舞台の全体を見たときに木梨軽皇子の珠城くんが浮き立つように、立体的に見えたこと。水色の着物に、ヤマト時代の髪型。誰のものでもない、珠城りょうが主演の舞台。

 絶対的に端正な顔立ちしていて、生まれた時からのセンター。御曹司。だけどそれまでそれを生かしきれていない珠城くんが正直、いた。龍真咲と明日海りおってなんだか名前を聞いただけで震えが止まらないスター(オイ)の下で、萎縮していた珠城くん。

 そんな珠城くんに、「あなたはここにいていい」と背中を押したように感じた役が木梨軽皇子で、そういったのはそれを創った上田久美子だった気がする。

 ピースがはまって、動き出した気がした。ああこれが当たり役、ヒット作に会ったときの役者の顔なんだ。話の展開にドキドキしてわくわくして。悲恋の美しさ、悲しさ。妹を愛してしまった木梨軽皇子の苦しみ。紡ぎ出す言葉の美しさ。

 近親相○ではあるので好き嫌いはわかれるだろうけども、とにかく美しい珠城くんが見れます。あとあーさ!この作品で私は朝美絢という役者を認識したのだけど、「リアル里中満智子清水玲子作画の子がいる…!!」と雷に打たれたような衝撃を受けた。(あれから10年、あーさは変わらず清水玲子作画なので何かがおかしい)蓮つかさくんを覚えたのも、照明の笠原さんの名前を記憶したのもこの作品だったなー!    

 日本の古典はこれほどまでに残酷で美しい。

私にその世界を教えてくれたのは上田久美子でした。

 

宙組■「翼ある人びと」(2014年)

 

 「デビュー作がバズった人」という印象のまま、2作目。まずポスターの美しさに目を見張る。これ…タカラヅカのポスターなの…?今までタカラヅカのポスターって言っちゃ何だけどダサかったんですよね。見る人は見るし見ない人は見ない世界だっただろうから(笑)でもここあたりから、「見たくなるポスター作り」に劇団が本気になり始めたな!と思う。だって今までのポスターただの女子中学生のスクラップブックだった…(もうみなまでいうな…)

 退職後の記事にマーケティングを意識した(中略)スターでどういう衣装を着ていたらチケットが動くか。そういう観点で仕事をした。」ってあってなるほど~と。確かに羽根が舞うどこかわからないグレーの背景にあの美しいまぁ様とお人形ですか?っていううららちゃんがいるポスターあったらチケット血眼になって探しますよね。いやもう探した探した。血眼になって探したわ!!(いい笑顔)

 デビュー作が私にとって「全然興味なかった新しい世界」だったのに対して、2作目のブラームスとクララは「それ興味あって知りたい世界」。見たい見たいそれとにかく見たい!!ってなった作品。そっかぁ、それ我々に対するマーケティングの結果だったわけですね、それも納得。

 だって考えただけできれいじゃないですかブラームスの音楽はとてもきれいで、その上クラシック界の語り継がれるスキャンダル悲恋だもん。その上相手が伶美うらら様だもん。この世のものとは思えないきれいな世界が広がってるに決まってる!

 

(この頃はちゃんと公演評的な文章書いててえらいぞあたし!)

 2作見て思ったことは、上田さんはその生徒の得意分野を伸ばす人だったのだなと。というか、苦手なことをさせない主義。言っては何だけど、この時代のまぁ様って歌が上手とは言い難く、ダンスで「きゃーーー!!」って思うタイプ(私はそうだった)。なので主演にしては歌ではなくダンスで印象付けるシーンがすごく効果的で心に残ったな。ひらひら舞う雪のようにダンスしたり、思い悩むシーンで眉間にシワを寄せてガンガン踊るとか。

 歌が得意だったら歌わせる。

 ダンスが得意だったら踊らせる。

 芝居が上手だと思う子には場面を与えてセリフを言わせる。

そういう「得意分野を伸ばして成長する」という手法が難しいタカラヅカ(スター制度があるからね…)。2作目でその

「りんきらは芝居やらなきゃりんきらじゃない!」

「緒月は芝居やらなきゃ緒月じゃない!!」

「うららちゃんはデコルテがきれい!ガンガン出していこーぜ!!(って肩出しドレス着せまくる)

みたいなそういうの、今思うと革命だったんじゃないかなあと思います。この時点で愛月ひかるさんがもう「色物役者」ってこと見出してるしね笑(語弊があるよ)愛ちゃんのリスト、ほんとにセンセーショナルだったんだよなあ!

 

 あとここまで過去のブログ読み直してて、私まじで上田作品の2番手に弱すぎだなあって思う。ちなつ穴穂さんといい、緒月ロベルトといいベタ惚れでした。

 私、ミュージカル大好きって思っているんだけど、その前にタカラヅカが好きなんだなあって思ってるタイプで。タカラヅカタカラジェンヌがきれいな衣装着て歌って踊って芝居してればそれで満足、ショーが大好き、芝居は面白ければラッキーくらいに思ってたのだけど(今もここらへんはそのままかも笑)、上田さんが出てきて「お芝居って面白い」「役者ってすごい」って思い始めた。だから本当に感謝しているのです。上田さんが出てきたから、芝居そのものに興味が湧いて改めて柴田さんや小池さんのすごさに気づけて、ハリーの作品はやっぱり好きだ!!って思ったり。同じ女性でも植田さんや小柳さんとの違いにもニヤニヤしてみたり。新しい世界が広がった!

 

 1幕のブラームスの絶叫、2幕のクララの「自由になるのよ」、これほど泣いたセリフはない。

 胸が痛い、苦しい、人を愛するってなんてつらい。

 でも、それでもずっと見ていたい美しい世界。ブラームスの音楽はとても美しいけれど、この芝居を見てから少し悲しく聞こえてしまうのは私だけではないはず。8年たった今でもそう思っています。

 

大劇場デビューから全盛期到来~星逢からエルベまで(’15~’18)

 

 最初に「信者でもなんでもないんで~!」とか言いながらこのままだと夢の大台2万文字とか夢じゃないレベルまで語れそうなんで(どの口が言う)ここからはサクサクいこうと思います。うん、そう、あとたぶんここからはここを読んでいるみなさまの方がお詳しいでしょう(笑)

 みなさまも「あの時ああだったな~」と思いながら一緒に振り返りましょ!

 

雪組■「星逢一夜」(2015年)

 正確に数えてないんで、アレですけど私がおそらく過去1番通った公演ではないかなと。もう最後の方はしんどすぎてつらすぎて。公演見る前に桁外れな気合がいる公演はこれが初めて(さあ!星逢見るぞ!!っていう通称「星逢テンション」)

 タカラヅカにニュージャンル、百姓一揆モノ」。これが大劇場デビュー作?とんでもないバケモン演出家出てきたぞ!!身震いが止まらず、トリデンテも止まらず。雪組バブル絶頂期。

 ちなみにこの作品、中日公演でセルフ再演されたのですがぜんっっっぜん違う公演になっていて上田さんに「あんたらまだまだ甘いのよっ」と0点の答案用紙を突き返された気になったのは私だけではないはず…(ラとGHでどれだけ救われたかですよ。嗚呼ほんっっっとにショーあってよかったよ…)

 

花組■「金色の砂漠」(2016年)

 本人曰く超娯楽エンタメ作品、別名「上田版フラワーコミックス」。超絶美しい奴隷と超絶美しい王女様の身分差ラブストーリー。

 足で踏みつけられるトップスター明日海りおが見れる作品として有名(そうか?)。明日海さんの得意分野「美しく聡明だが、劣等感・コンプレックスの塊」「それゆえに人の愛し方がよくわからない(こじらせ男子)」「ドMに見せかけてドS(逆然り)」 的な明日海観が私とマッチしハイタッチ、「それ私も思ってたー!!!」って謎の共感を上田さんにした結果、夢中になったのは王様ジャハンギール(ちなつさん)っていう。よくわかんないけど、ハマりました…。うんすごい勢いでハマった。

 これも上田さんのモットー「得意なもんを思いっきり」的な解釈が私にとってもノーストレスでした。だって金髪オールバック柚香光が求婚者ですよ。どんだけ適材適所よ。柚香光の得意分野=ヴィジュアル…とな…!?!?(震)っていう。冗談です。(真顔)

 とにかくかのちゃんのタルハーミネが絶品。上田作品のヒロインはうららちゃんとかかのちゃんとか、高潔で汚れのない魂を持ってそうな硬質な美人がやる役が好きです。(平たく言うと、アホな冗談では絶対笑わない美人)

 

宙組■「神々の土地~ロマノフたちの黄昏~」(2017年)

 一言、「車で、待つ!!」に限ります。(断言)いや~このまぁまかは本当によかったです。宙組といえばロシア物、それを印象付けたに一役買った作品ともいえる。だってロシアものってやっぱり軍服、その軍服が得意なのって大きくて雄大な彫りの深い欧米顔が多い宙組じゃないですか…いい…まぁまかの軍服は…国宝…!!!(号泣)どんなときも「とにかく似合うものを着ていこう」精神、上田久美子。あたしほんと、この神々の話になると軍服の話しかしないんだよな…ごめんやでほんとに…。

 まぁまかがとにかくお似合いで、今振り返るとあれ「チェリまほ(今現在世界が空前のBLブーム)」の前振り公演だったんちゃうん…!!と震えるような(んなわけない)

 みりおん退団後の宙組でトップ娘役不在のまま、まぁ様のサヨナラ公演となったなかなかない境遇の作品。後から思えば、「翼ある」のヒットで盤石なる地位を固めたまぁ様のサヨナラ公演を担当、というこれだけでもNHKのドキュメンタリー1本書けそうだよなあとドラマが広がります…。(まあこれだけ言っても上田さんは「あー、期待されるような交流はないっすね(スパッ)」って感じなんだろうけど)

 

月組■「BADDY-悪党(ヤツ)は月からやってくる-」(2018年)

 ショーをやりたいやりたいやらせてくれ公言してた上田さんに「あんたの夢かなえたろか」と乗り出したのが月組やっぱり相性とタイミングってあるんだよなあ~と思ったのと、人間夢って公言しておいた方がいいんだよなぁ~!!っていうのと(そこ?)ドリームズ・カム・トゥルーinタカラヅカ

 空前のBADDYブームとなったわけですが、新しいというよりはショーはあくまで基礎の基礎、オーソドックスな作りに上田色を重ねて重ねて、アップデート&ブラッシュアップで超新感覚なショーが出来上がってる…っていうか理屈どうでもいいわ、みんな大好きめっちゃたのしいやんけこれ!!っていうテンションぶち上げショーです。簡単にハイテンションになれるのでとにかく全世界ぶっ飛ばしたい気分のときにみんな見るよね?私はそう。Adoちゃんの「うっせえわ」か月組の「BADDY」かってところ。(どっちも「アホかもうどうにでもなれ!!」っていう仕事帰りに聞くBGM)

 品行方正、いいとこのぼっちゃん、育ちのいい誠実な男性、結婚したい男No.1…こういった「理想の男」道爆進中の珠城りょうに「邪魔だどけ!!!」と言わせた時点で上田久美子の圧勝ではないしょうか。

はい、満了一致で月組と上田久美子の勝利です!!!

 

星組■「霧深きエルベのほとり」(2019年)

 やっぱり七海さんには少女マンガの世界ですよね、わかります!(いい笑顔)っていう作品。いやね…ほんとにあたし、七海さん暁千星さんにはめっちゃカワイイ女の子とめっちゃキレイな場所で絵に描いたようなキスしててほしい、ただそれだけなんですよね…。(苦労とか労働とか暴力とか金とかそういうのいらないんすよ…)

 ってそれはいいんですけど、ついに往年の名作の潤色、という仕事を始めた上田さん。潤色とオリジナル脚本を書く仕事って似て非なるものなんだろうな~と思ってるんですが(逆にオリジナルをあそこまで書ける上田さんにとって結構ストレスフルな作業じゃないかな?と)と思うんだけど、私はなぜか小さい頃から「「名作」と「永遠の定番」に間違いはない」という持論があるので、ヅカファンなら何度も耳にしたことのある作品を上田久美子ver.としてこの目で見れるというのはとても贅沢な気持ちになれました。

 カール役の紅ゆずるさんがすごくはまってて、これもマーケティングの成果なんだなとまんまとハマった自分が少し悔しい(笑)。紅さんってああ見えて中身がガラスハートの繊細さん演技めっちゃ上手。不器用で貧乏でこれといった特技なんてなく、だけど心があったかくていいヤツで、とにかくマルギットが大好きなカール。そんなまっすぐなカールがマルギットのために切ない嘘をつく。

 とても哀しく切ないラブストーリーなのだけど、見終わるとなぜか温かい気持ちになる。ここまでくると、上田さんどんだけ悲恋にバリエーションが…!?と上田さんの歩いてきた人生に興味と心配が湧いてしまう…。

 

座付きとして圧巻のラストへ~サパから桜嵐記まで(’20~’21)

 

宙組■「FLYING SAPA-フライングサパ-」(2020年)

 この作品を見て

「上田さんもう長くはここにいてくれないかも」

「もうこの枠(=タカラヅカ)が窮屈でたまらないんだろうな」というのが手にとるようにわかったような気がする。今思い返せば、「公務員」という言葉を使ってやや卑屈になってたセリフもあったし(苦笑)まあこれはいつもか…。私にも見に覚えがあるんですけど勤続3年目辺りになって徐々にわいてくるアレ。あ~そういうけどもうどないせいっちゅーねん!!(会社に対して)っていう。

 これを見て上田さんは反骨精神を隠さずに、わりと馬鹿正直に作品にするっと乗せる人だなと思ったんだけど、これは明らかに「あたしのやりたいのはもっとこれよりさらに違うことなんだけど、それ上が許してくれないからこれが限界です~~~!!!」と叫んでいるような作品だった(って私は解釈した)。

 サパは確かに問題作というか、革命的な作品だったと思う。私はこの作品をどう思うかというよりは(戦争とか暴力とかをちゃんと描いた作品をこの劇団で上演するのって本当にすごい勇気だと思うんですよ…)タカラヅカジェンダーレス化すごいな、とそっちに感心がいってしまって。「観客は女性中心だからああいった表現だめ」とか「女性が演者だからこれNG」とかもう古いんだなと。こういうことを、時代に合ってると思えばちゃんと許可出す劇団だから100年も生き残れているんだな~と…え?上田さんの話どこいった?ってことになるんですけど(笑)

 でもまあ、「上田くんがやりたいというならば」というところがきっと大きいんだろうな~とは思う。サパが無事に上演されたのは、上田さんの実績と才能の賜。

 いやぁ~、天才ってありがたい!!!とバカみたいにうなづきながら、夢白あやちゃんがめっちゃかわいいことに気づく。(大好きなお顔立ち)

 

雪組■「fff(フォルティッシッシモ)-歓喜に歌え!-」(2021年)

 望海さんのサヨナラ公演なんで、一筋縄ではいかないだろう、というか私が冷静に見れないだろうと危惧していた公演(苦笑)うん、見る前から全然フラットに見れない自分の感情よ。しゃーないしゃーない。望海さんのサヨナラだもん。

 といいつつ、蓋を開けてみたらここでも散々言ってるけど久美子哲学全開。ここに出てくる人たちは長いヨーロッパの歴史の中でも、飛び抜けての天才ばかり。

 ベートーヴェン、ナポレオン、ゲーテそりゃあ理解できないわ~!!と開き直ったらとたん楽しくなっちゃったっていう(私が)。特にラストあたりの歴史上ではありえない、ベートーヴェンとナポレオンの「天才とバカは紙一重的な会話(通称「奇跡のシンフォニーってなんなの?話」)がもう最高に面白かった。それを望海さんとさきちゃんにやらせるのも本当にセンスがある!としか言いようがない!!(笑)

 「サパ」やってからまた一度こっち(タカラヅカっぽい題材(大河歴史ドラマ))に戻ってきて「サパでやりすぎて怒られちゃったのかな?」って思ったんだけど(笑)蓋を開けたらやっぱり上田久美子丸出し。「タカラヅカらしい」「タカラヅカらしくない」問題で板挟み、じゃあどうないせいっちゅーね(以下略)という叫びが…聞こえる…。

 上田さんしんどいだろうなあと勝手に推測しながら、「いやそれにしてもナポレオンとゲーテの登場シーンのすっぽんの使い方、今度演出家の新人研修で参考資料にできるんじゃね?!素晴らしすぎるわ!!」とここの舞台機構ヲタクは興奮がとまらなかったっていう話。

 望海さんのラスト公演に、歓喜の歌を歌わせるセンスに私はそれだけで西に向かって敬礼しました。やっぱ第九はいいです!!!(アホみたいな感想)

 

月組■「桜嵐記」(2021年)

 上田さんのタカラヅカ人生においての起爆剤月組トップ珠城くんのサヨナラ公演。望海さんのサヨナラに続いての珠城くんのサヨナラもかあ~((小声)他におらんの?)と思いながらも、このときは上田さん自身のタカラヅカラスト公演になるとはつゆ知らず。それにしても本当に相性がいいよなあ、上田さんと珠城くん。私の知ってる珠城くんの中でもベストオブ珠城でした。(美しすぎて目が痛いという現象)

 とにかく誰もが言うように「これぞサヨナラ公演」というところ。それ以外言えないくらいの教科書的な、模範的な、劇団が全総力をあげて珠城閣下をお送りします!!といった公演で。目に入る物すべてが美しいという公演。

 結果論になってしまいますけど今思い返せば、最後の最後にこういった「奇をてらわない」「タカラヅカらしい」「誰も文句言わない完璧な」公演を書き上げたからこそ、たぶん上田さん自身が自分にOK出したんじゃないかなと思う。「よし、やりきったぜ!次行こう、あたし!」みたいな。

 珠城くんの演じたもののふ魂は、上田さんの中にもあるものなのかもしれない。上田さんて、思考とかセンスがフランス人みたいな人だなとも思うんだけど(笑)(なんつーか、素直じゃないっていうか皮肉っぽいというかすべてがシュールなんだよな…)根っからの武士魂があるから(「私にはまだここでできることがあるのかもしれぬ…」とばかりのラスト公演への挽回劇)10年、会社のサラリーマン演出家として結果を残せたんだろうと思う。素晴らしいラスト公演でした。あっぱれでした!!!

 

 …ということで、全9作品。私の主観のみで書かせてもらいましたが、みなさまはどうでしたでしょうか。ちなみに、みなさん上田作品でどの作品が一番好きですか?私はやっぱり、「翼ある人びと」を超えるものはないかもしれません。見たときの立ち上がれないほどの興奮と感動、美しさの洪水。忘れることはないでしょう。

 ここまで書いて、あ~、上田さんは間違いなく100周年以降のタカラヅカ、すなわち「日本の伝統芸能宝塚歌劇団」にタカラヅカを押し上げたひとりなんだな、ということを再認識させられました。理事長も代わったし、きっとこれからもあの劇団は変わり続ける。まあこれからも、「これ、おい、ちょっ…ひどくないー!?」と怒ることもあるだろうけど(苦笑)それでもまあ、たいがいのことは「またあの劇団面白いことやり始めたぜ」って笑いながら楽しんでいこうと思っています。

 上田久美子さんに対しては、不安も心配も一切なく(オギーのときは結構心配だった(笑)消えていなくなりそうだったから…)いい笑顔で「これからも楽しみ!!」と言えます。

 

 きっと、世界の劇場でこの名前を見ることになると思う。演じるキャストがタカラジェンヌではなくなって、いろんな人が上田久美子の芝居をやる。世界中の演者があの美しい世界の住人になる。

 

 すごいことだと思う。10年間、私はあなたにすごい世界を見せてもらっていたと本当に思う。

 舞台の美しさも悲しさも、人生の大変さも教えてくれたあなたの舞台。

 

 上田久美子さん、10年間ありがとうございました。

 また、世界のどこかの劇場でお会いできることを楽しみにしています!!

 

 2022.5.8 ただのヅカヲタより