MENU

星組「日のあたる方へ」真風涼帆のザ・爬虫類色男役の出来上がりっぷりがすごい!

ピンと空気が張り詰めていて、もはやタカラヅカを見に来たという感覚を忘れる。
真風涼帆がジキルとして息づき、呼吸をしているのが劇の中だけなのか、
リアルにジキルという人物がブラジルにいるのか。

確かに賛否両論のキムシンによるキムシンのキムシン的な作品ではあるが、
ヒロインマリア妃海風始めもちろん主演の真風涼帆の圧倒的世界観に
ズブズブはまっていくのがわかる。
麻薬のようであり、一度観たら癖になりそうな好きな人はとことん好きな世界である。
賛否両論あるのはわかるけれども、私は正直ここまで作り上げた星組若手と、
丁寧にこの芝居を(今までの作品はなんだったのかと思う程)練り上げた演出に、
やればできるじゃんと思う次第である

(相変わらずキムシンに厳しい私は何が「トラウマ」なのだろう…ジキル先生教えて)



【真風涼帆という主演の力】


キムシンの「ちょwwそれ待ってwww」な語彙センスの脚本と歌詞にはある程度の
キャリアを持つジェンヌさんでも難しいと思うのだが、
というか私がついヘラッとしてしまうのだが今回はそれを許されない脚本だった。

曲の歌詞の「♪ブラジルに戻りたい~」はやはりキムシン感も拭えないが、
脚本が今回はタカラヅカというとこを忘れるほど専門用語のオンパレードで、
空気が張り詰めて真剣に聞いていないとどこかとりこぼしが生じる感否めない。

だが、ニュアンスで聞いていたらなんとなくわかるタカラヅカミュージカルとして私は
「難しいことはわかんないけど、要するにこういうことね!」という
最後はなんとか切り抜けるキムシンギリギリミステリーが爆発している。

さて、今回のキムシンのミューズとなった真風はとても
男役一桁とは思えない演技力である。
ある程度のキャリアを積んだ役者でも難しい

「1人2役」、

「善と悪」、

「優しい人を思いやる気持ちと犯罪者」、

あらゆる言葉を使って表現できる正反対の役を一瞬で切り替える。
照明の力と音楽の力を借りているとはいえ、特に2幕のジキルとイデーの切り替わりは
怖いほどの神がかりな演技ではないだろうか。

タカラヅカの枠は超えていると言ってもいい。

私は以前

「爬虫類色の照明が怖ろしく似合うぬめっと感を持つ男役」

と真風を呼んできたが特に「真風氏の爬虫類感」が楽しめたのは
2幕の公開実験で自ら薬を飲み、イデーになってしまい

大暴れ→客席に逃亡、

のシーン。照明・音楽が効果的に取り入れられ、真風の
元々の身体能力の高さで非常にかっこよく、アクションが楽しめる。
精神世界の作品でアクションを見れるのが珍しさも際立って印象的な場面だと思うし、
ジキルとしてもイデーとしても後々の芝居に生きる場面なのでインパクトは絶大だ。
男役のアクションシーンとして秀逸のシーン。

TAKARZUKAこだわりコレクションで「アクション」のお題だったら
近年ではこれを差し出す他ない。
 
真風氏のぬめっと感をもっとというならば、やはり殺人シーンも外せない。
銃をひとひねりで人を殺し、憎むべき悪人もずーっと殺そうと首に手を掛けている。
真風氏はぬめっと罪を侵す爬虫類ライトをあび、見事にイデー役になっている。

さっきまでのジキル先生はどこに?

真風氏は本当は双子ではないのか?

と思うほどの変わりよう。

ジキル先生の白と、イデーの黒。

どちらも魅力的にこなしかっこいいのは、真風涼帆だから他ならない。
タカラヅカのスターは黒でも白でもかっこよくなくてはならないというシステムを
今の若手で1番演技で表現できる役者だと私は思う。
ヘタレを演じることが多い真風氏がこんな裏ワザを持ってるとは
正直ロミジュリまで私はわからなかったのだが、真風涼帆という役者は
本来はカメレオン役者で、こんなに幅広い演技力を秘めていたということに驚きを隠せない。

嬉しい発見で、見に来てよかったと心から思った。

次回作も楽しみでならない新公を卒業したての若手の域を超えた若手である。

そして、黒のイデーばかりではなく、ジキルの白の部分も魅力的だった。

マリア妃海に向ける優しい表情と声。
マリアを治そうと、新薬の実験台に自らなるという行動。
勇気と信念、愛する心、タカラヅカのヒーローで不可欠の条件が
キムシン「ジキルとハイド」のジキルにはある。
それを、見事体現した真風涼帆には男役として無限の可能性があると思いたい。
【ブラジルというカオス感】

 
舞台が欧州ではなく、ブラジルということに見た方は

「別にブラジルじゃなくても…」

ということだったが、私も無意味な設定に思えてならなかった…。
キムシンが思いついた場所がブラジル、というだけの世界で
別にブラジルだろうがどこだろうがさほど劇の舞台には困らないのだが、
キムシンのいつもの

「重いこだわり」

が生んだ印象的なシーンがサンバの場面。
映像で「カオスww」となった真風・天寿・十碧のサンバステップに、
なぜかブラジルカルナバル仕様のダルマが登場する。
ここらへんで一気に「ミュージカル・ジキルとハイド」から

「キムシン作・タカラヅカジキルとハイド」

になる瞬間である。

正直、この場面必要か?

終わりもロマンスが含まれとっても心温まる最後なのに、
突然のサンバに笑いがとまらない状態になる、でも
そんな宝塚歌劇「日の当たる方へ」が「カオスww」となりながらも…好きです!

 
【脇を支える役者たち】

 
・天寿光希   

さすがの歌唱力。この人が舞台に出ると安定感半端ない。
適度に力が抜けていて、3人の友情の要となる存在感である。
「頭のいい人たち3人」である存在が1番納得できるのは間違いなくこの人。
1番生活力がありそうなのも天寿さんだと思う(笑)
そして今回は顔はもちろん心もイケメンなのでもうイケメンすぎてつらい。


・十碧れいや

 
どこかほわんとしていて「だ、大丈夫か!?」と思わせるが
それはキムシンの計算であるとしたら正直、降参です。
優しさがにじみ出てて、ジキルを1番に思ってる人。
困ってたらもちろん助けるし、わがままなことは言わず無理やり誘うということもしない。
人を「察する」ということができる「ザ・出来た人間ジョアン」を爽やかに好演。
出来過ぎてて物足りなさは、ご愛嬌です。


・忘れてたわけじゃないよ妃海(真風ボイス)

 
この人も宝塚娘役の演技力じゃないと思う。
域を超えた役者だと思います。
歌唱力はもちろん、この安定感は只者ではない。
精神を病んでいる人間がこんなことは言わないとか、やらないとか、
そういうのはどうだっていい!と無条件に
ジキルと鬼ごっこするシーンを見ると思います。
ラブシーンやキスシーンがないロマンスというのは成立させるのは
とても難しいと思うのだが真風・妃海の安定感は恋愛の域を超えて、
人間愛にすら思えるほど。

最後のジキルに寄り添うマリアが愛しくてかわいくて、ホッとします。

もうこの子は大丈夫、と思う安心感。
精神を病んだ人間は生涯安心という名の人生は送れない、という
「再発」を含んだ言葉を本や医者はよくいうけど、妃海マリアは

「そんなことはない、ジキルを愛し信じることで
彼女は新しい人生を迎えられ、幸せになる」と思わせてくれる素敵なマリア。

最後の微笑みが忘れられない。


・美城れん

役者!とにかくこの人が出てくると雰囲気が一気に和らいで
緊張感がふわっと緩む(いい意味で)。
コミカルにちょっととぼけたおじさんを演じていて、救われない内容になるところを
ギリギリにストップさせてくれる、天寿さん同様お芝居の安定の救世主です。

【個人的メモ】

 
照明    勝柴次朗
音楽    長谷川雅大・手島恭子

今回のエロ役者選手権優勝者
音波みのり(出番が少ない中あれだけのブラジル人女性の色気。はるこちゃん無双)

いい役者若手編選手権優勝者
輝咲玲央・瀬稀ゆりと(将来が怖い真風氏と同期トリオ)




「見いつけた」



【個人的見どころ】

真風氏@パジャマ(チェック)&この人が朝起きたら隣にいたら絶対死ぬ、寝顔。
木村信司先生いろいろ無礼を申しまして申し訳ございません)