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ようこそ、グランドホテルへ。①人生のミュージカルは、男爵の「懐かしさを感じる貫録」から。

ようこそ、人生―グランドホテル―へ。

 
「グランドホテル方式」という名前は聞いたことがあるものの、
どのような物語でどのような登場人物がいて、最後はどうなるのか。
知らないままのほうがいいのかな、と思い今年初のムラで観劇してきました。
 
「燃ゆる風」のポスターに目線をやりつつ(本当に見たかったんだね…)
 
新生月組お披露目公演、
ブロードウェイミュージカル人気作品の待望の再演、
トミー・チューン氏が特別監修…
 
などいろいろな謳い文句のある作品ですが、見た後の第一印象は
 
「みんなお金に困ってる!!!」
 
でした。
すごい、こんなに豪華なミュージカルなのにみんなお金に困ってる話ばかりだ…!
そして、ポスターがうまく出来ているな!と思うほど舞台が茶色い…
 
昭和の食卓みたいな…!
 
とおまえそれどうなんだよ、という第一印象。
でも、このグランドホテル。
 
本番は、2回目からでした。
 
(「燃ゆる風」を見れなかったのでマチソワにした雑食系タカラヅカファンあくるさん)
 
 
1回目でわからなかったことがどんどんわかる、2回目。
 
すごい、このセリフがここに繋がってる。
 
フラムシェンは最初からこのセリフで最後の驚きの事実をもう言ってる。
プライジングは最初から変態だったわけではなく、ちゃんと仕事はしていたんだ。
オットーだけは自分を貫いて、そしてフラムシェンとの幸せをこのあと手にしたと思いたい。
ラファエラはこんなにもグルーシンスカヤのことを思っているのに
優しすぎるから苦しんでいる。
 
エリックだけが、このグランドホテルの希望。
一筋の光、グランドホテルの従業員、宿泊客のみんなの希望で、
明るい未来が待っている。
 
 
 
そして、男爵は?
 
 
この作品に出てくるキャラクターはひと癖二癖ある一筋縄ではいかない人間ばかり。
 
貴族という身分に甘えた泥棒が、初めて恋を知り愛を知り、
愛する人と生きるために命を落とす最後。
それは、よく出来た小説でもなく、ただのミュージカルでもなく、
その時代を生きた人々の人生の話。
 
 
グランドホテルは人生のミュージカルである。
 
 
 
珠城りょう/人生を楽しんでいる男爵
 
 
男爵と聞いて目を輝かせるフラムシェン。
美しい女性で、恍惚の表情をし、自分に恋するグルーシンスカヤ。
友達だと笑いかけるオットー。
エリックとは仲良し。
ラファエラからは…なんとも。
最大の敵は、運転手の振りして脅してくるギャング。
 
金はーーーない。
 
 
珠城くんなら絶対男爵!と初演を見た人でもミュージカルで知ってる人でも思うであろう、
なキャラクターのぴったりっぷり!
男爵を真ん中に置いたことで、見えてこないことも見えてくる。
第一にかっこいい。
スラッとしたスーツ姿に、人生を心から楽しんでいる余裕の男。
 
平成の石原裕次郎と囁かれただけあるね!
 
という美丈夫。
若くて、溌剌としてて誰とでも仲良くなれて、そして優しい。
このキャラクターって年上女性からモテるタイプで、
グルーシンスカヤとは恋するべくして出会ったと思うんです。
 
恋するために、愛するために出会った男爵とグルーシンスカヤ。
 
たった一夜で燃えた恋は次の日にはウィーンへの片道切符となり、
真っ赤な薔薇で胸をいっぱいにし駅で
愛しいグルーシンスカヤを待ち焦がれる予定だった男爵を
珠城くんが
 
「ほんとそれ!ほんとそれだから!!!」
 
と大きなピンポン押しながら近づきたくなるキャラクター作り・・・。
ちょっと日本でいう昭和っぽさがこの世界観の茶色い
レトロな雰囲気にハマってるんだよなぁ。
珠城くんは
 
日本料理なら肉じゃがだね!と
謎の表現をしたくなる
 
茶色っぽさがたまらないのです。
なんか新トップスターなのに懐かしさを感じる貫禄。
 
 
それが平成の石原裕次郎、珠城りょう。
 
あくるさんいいかげんうるさい。
 
男爵の「優しい嘘」が「本当の恋」になるグルーシンスカヤとの関係は
愛希さんの今の心境にもぴったりではないかなと思います。
なんだろう、
 
新しい相手役という自分を大きな心で自分に気持ちが
向かうのを待っている感じ?
 
ほら、もとだんなさんとは激しい恋に落ちた愛希さんだから、
時間が必要なのよね!と
 
めっちゃ身の程知らずの近所のおばちゃんみたいなお節介を思ってしまう。
 
その珠城くんの茶色い貫禄が愛希さんを優しく見守っていて、
いつでもいいからーーー僕はここにいるからーーーみたいな
そんなちょっとくらもちふさこ的な少女マンガを感じてしまった。
 
珠城くんと男爵は似ている。持論です。
男爵がグルーシンスカヤを思う優しい気持ちは愛希さんの心が
自分に向くのを待つ珠城くんに重なってしまってね…
(すみません、これは勝手な解釈です)
 
ババアは涙が止まらなかったさ。
愛希さんをディスってるわけではないよ。
珠城くんの大きな愛に感動したんだよ!
(タチの悪い酔っ払いみたいになってる)
 
僕はここにいるよ、さあ待っているから、いつでも飛び込んでーーー的な。
その優しさがフラムシェンを救ったんだけど、俺死ぬ!になってしまうところが
 
♪そう、それが 古い ベルリン グラーンドーホーテール♪
 
女の子を助けたがために、自分は我を失った実業家に殺される。
誰が悪いでもない、まあ、悪いのは
 
「お金がないと幸せになれない」という貴族に生まれて
その身分に甘えて気づけば金がなくなり犯罪を侵すしか生きていく手段がなくなった
自分を許してしまった自分
 
…と、
 
それでも生きたい、一緒に寄り添って生きていきたい、と思う
女性に出会ってしまったグランドホテルという場所、古きベルリン。
 
男爵、あなたがいなくなったあと、残る歴史は世界恐慌
ナチスドイツのユダヤ迫害という悲しくて人間が侵した歴史の最大の過ちが起きます。
 
それを知らずにグルーシンスカヤとの夢だけを見て、
いなくなったあなたは、幸せだったのかもしれないね。
 
珠城くんの快活で溌剌とした若き男爵像に、暗い時代は似合わないよ。
愛希さんを力強くリフトするあなたを見た時、私は思ったよ。
 
「あ、この人今は男爵で、男役というか、男だな!」
 
ってね!
 
蒲郡の田舎にいた水泳の得意な女の子、みきちゃん」
の片鱗なし!
 
潔いい!!
 
 
・・・長くなってしまったので数回に分けます。
グランドホテルは私の宝塚ファンのターニングポイントになる
作品かもしれない。ちょっと自分に起きたこの感情は、
初めてタカラヅカを見たときに似ている気がするよ。
 
次回、恋するおばさん・・・失礼、美魔女、グルーシンスカヤに
化けた愛希さんの美しい姿と「ヨッ、心はまだ10代ッ★」とガヤしたい
ピュアな表現力に脱帽。愛希さんの本気はタカラジェンヌの枠を超えたよ!!!
 
~次回に続く~