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星逢一夜②源太の優しさとは、晴興への想いとは

※ネタバレってます。ご注意を。※



間が空いてしまいました。


このお芝居の感想を書くということは結構なエネルギーを使います。
あの、切なさが溢れる想いを文章にするのは意外と重労働だったりするのです。
そして、あのショーが挟むから(笑)パーンっとなってしまうんですよね(私の場合)。

終演後思い出すのはギラギラの「♪彼女はエメラルド~」が
エンドレスに回る状態なので少し精神を鎮める作業が必要です。



◆源太 望海風斗



過去記事を遡ったらまぁ私は源太をどれだけ勘違いしていたんだろうと。

闇とか束縛とか妄想で言っていましたが、それとは全く逆の人間でした。

源太は、長所も短所も優しいところです。
優しすぎてなんて素敵な人だろうと思うけれど、時にその優しさは残酷です。
こんないい人いないだろうと思うけれど、こんな人はどうなんだろう、と思うのも源太です。

晴興と両極端で、並べてさあ選べと言われても無理な人間。
泉がどっちを選ぶのか、と最後までわからなかったけれど、結局彼女はどちらも選ばなかった。
選べなかったのではない、源太と結婚し源太の子どもを産み、
源太を失い源太のいた三日月藩で一生過ごすことを決意する。

それだけ泉にとって、源太は大きな存在で晴興がいなくなって一番に支えてくれた、
親より一緒に過ごす時間の長かった「家族」だったんだと思います。

「彼氏」でも、「旦那」でもなく、ずっと平行線の時が経っても変わらない関係の「家族」。


源太自身は泉を意識するのは早く、この腕に抱きたいとか、
早く子どもを作りたいとか思っていたかもしれないけれど
誰よりも泉のことを思っているが故に乱暴も束縛も、泉を苦しめるようなことは一切しない。


けれど、泉はその優しさがつらかったのかもしれない・・・。


今回の源太は望海さんにとって初めてのタイプのキャラクターではないかと思う。
いつも「演出家」の妄想を掻き立てる「演者」でもあることは
早霧さんやみゆちゃんとある意味同類だと思っているのですが

(この3人は演者としては似てると思うんですよね。
どれだけ化けるか、限界を知らない化物役者的意味で。
何部門が得意というのがない分、未知数すぎてどっちへ転ぶかわからない、
という意味で怖さも持ってると思う)。

タカラヅカにいなかったキャラクターで衝撃だったブロンソン(「ラストタイクーン」)とは
真逆の源太、束縛も強引さもなにもない源太は、果たして
同じ人間がやっているのであろうかと思うくらい違う。

目も違えばオーラも違うし、晴興に泉のために土下座もなんのプライドも邪魔しない。
それは、泉の幸せを心から願っているから自然と出来る行動なんだよね。

愛する人のためなら、プライドなんて喜んで捨てるし
その人が幸せになるなら自分はずっと1人でもいい。1人がいい。


子どもの頃から見てきた泉への源太の優しさが、「晴興へ泉を託す」という行動だったのかもしれない。
最後の一騎打ちは、初日からどんどん変わっていっているから
はっきりいってどの時が本当の晴興と源太の本当の関係なのかわからない。

表情が毎回びっくりするくらい変わってて、今日はこんな顔してる、と思ったら
次見た時は菩薩のような顔をして目を閉じていたりする。

これが「演技の正解を作らない」早霧さんと望海さんの関係なんだと思う。
そして、それを泣きながら見つめる泉のみゆちゃんも。

源太の優しさは晴興にとっては苛立たせるものだったかもしれない。

なんでお前はそんなに優しいんだ!
もっと怒れ!そして俺を殺してくれ!

そう泣きながら晴興は源太を斬る。
源太は戦っている時、なにを思っているかわからない顔をしている。

怒り?
悲しみ?
憎しみ?

苦しそうな顔をして、何かに耐えているの?

正解は一生出ないかもしれない。それが、源太という人物だから。
優しいけれど、なにを考えているかわからない優しさで時々私は苛立つ。
なんでそんなに優しいの?と、思ってしまう。優しさが、泉を傷つけているということを
きっと源太は知らない。だって、それが源太だから。

計算なんて何にもしていない、それが源太の性格だからなんだ。

「私が幸せにする」

きっと、あの時本当に泉はそう思ったのだろう。自分のために土下座までしてくれた、
源太のことを思って。その時何も言わず、去っていった自分の思いびとのことを思いながら。

泉も計算なんてできる女じゃない、そして晴興も出来る人間じゃない。
誰も頭の中で考えて、考え抜いて正しい「正解」を行動に移す人間ではない。
むしろ、そんなことができる人は「人間」ではない。
計算通りに行かないから、人生というものは動いていく。

「星逢一夜」、このお話は

「誰も正解を持っていないから切なくて悲しくて美しい」

「そうするしかなかった、そうしかできなかった」

源太と晴興との間の友情は確かだった。
源太と泉の間の愛も確かだった。

それだけだったんだ。

誰も悪くない、誰も善くない。だから人間は生きていく。

3人はまた出会える。きっと、どこかで。
3人が星が瞬く夜空を見上げる限り、3つの星は動いても、また出会える。
泉と晴興が忘れないかぎり、源太は二人の心に生き続ける。