TRUNK DIARY -ナナメカラタカラヅカ-

タカラヅカ見て半人生

柚希礼音が柚希礼音でいてくれたから。

トップ・オブ・トップ、宝塚の歴史に残るダンサー、トップ在籍6年、

ファンに対する神対応、芸事に関してストイックな姿勢、人間味あるれる演技なのに自然、

ラブシーンのリアル度の強さ、一途、力強い歌、男性にしか見えないリアル男役・・・


柚希礼音に関するワードをざっと挙げると当たり前の事実から、

実力を絶賛する、相手役に対する信頼度、愛、ファンへの感謝など

いろいろなキーワードが出てくる。100周年に退団を発表した柚希礼音、ちえさんは

晴れ晴れとした笑顔で会見するトップが近年ほとんどだが、目を真っ赤にして

泣きながら会見したことも記憶に新しい。



柚希礼音は本当に実在するのか?と疑ったことが私は何度かある。



あまりに人間離れしたメンタルの強さ。


先輩には人懐っこく無邪気に「ちえ」「ちえ」と愛され、後輩には神々しいほどの「先輩力」で

初舞台生に時々「目標は柚希礼音さん」と名指しされるほどのカリスマ力。


星組」という独特の世界を持つ組で、いまどき珍しい生え抜きトップスター。

組替えを繰り返すスターが多い中で星組は最後まで「柚希礼音」を育て上げてきた。

そして、この5月でとうとう「宝塚歌劇団」を卒業する。


「柚希礼音」とは「宝塚歌劇団100年」の歴史に美しい爪痕を残し、退団しようとしている。

私たちヅカヲタはどうしてそこまで柚希礼音を愛し、見続け、涙を流しながら別れを惜しむのだろう・・・


彼女の舞台に対するストイックな姿勢と「この人のファンでよかった」、そう思わせる

「柚希礼音」の実態。自分の青春を宝塚に捧げた柚希礼音の

タカラジェンヌである自分のプライド」は計り知れない孤高のプライドである。



①鮮烈な初舞台デビューと星組一人っ子政策」の徹底さで生まれたスター



初舞台はラインダンスでの「エイ・ティー・ファイィ!」という掛け声が伝説となりつつある

「ノバ・ボサ・ノバ」(雪組)。一度耳にしたら離れないこの掛け声で、

85期はデビューした。初舞台当時からダンサーと名高かった柚希は、

続演の「ノバ・ボサ・ノバ」(月組)の新公で「出世役」といわれるドアボーイを演じた。


この月組の「ノバ・ボサ・ノバ」新公は当時「伝説の新公」と呼ばれ、

主演・霧矢大夢をスター街道にのし上げた名作ショー。最後の霧矢の「シナーマン」の絶唱は

もちろんのこと、銀橋で霧矢の得意技のだんじり弁で客席を沸かせた功績は

未だ私の中では続いている伝説である。


このドアボーイ役、ステップを踏みながらパブの入口の鎖をかける、という一場面。

最後にはちきれんばかりの笑顔でスポットライトを浴び、暗転となるこの役は、

新公を見るようなタカラヅカファンには「あの子誰?」となる役であることはうなずける。


当時柚希がデビューした時代、172センチは長身だった。

今でこそ170以上がごろごろいる宝塚であるが、

当時は公称165センチでも男役ができた時代である。

172センチの柚希は大型新人といわれ、どこの組に配属されるか注目の的であったし、

どこにいってもスターになることを誰もが信じて疑っていなかった。


そして、私たちはその伝説の目撃者となり今日に至る。


星組に配属された柚希はメキメキと頭角を現し、新公では誰が星組に来ても

不動の主演を譲らず君臨した。星組伝統芸能ともいえる「一人っ子政策」。


この「一人っ子政策」は今でも賛否両論であり、組の賭けでもある。

星組では礼真琴がその任を任されているが、礼真琴が第二の柚希礼音になるか-------

は、神のみぞ知る、といったところであるが私の個人的な見解では

「礼真琴のほうが昔の柚希よりは実力がある、柚希礼音は今の礼よりオーラがある」

と思っている。もちろん二人とも甲乙をつけがたい大物スターではあるのだが、

柚希礼音は新公時代はそれほど実力は評価されていない。


ただ、礼は歌唱力、柚希はダンス、という特筆すべき特技がある特徴があるのも

この二人をつい比べてしまう要因ではある。ついつい私は礼真琴の新公が流れると

昔の柚希礼音を思い出してしまうし、秘めた可能性を感じざるをない。


だからふたりを重ねずにはいられないし、星組の「一人っ子政策」も外れではない

育て方かもしれないと思うし「星組」というブランドをこれから背負うであろう

礼にも「こっちゃん、ここで重圧に押しつぶされるな!!!!」と無言のエールを送る。


この新公時代の重圧に勝ったスター、それが柚希礼音。


「この子ダンスうまいけど、歌とか演技は普通よね」


新公時代いわれ続けたこの言葉を跳ね返すスターになるには、

まだまだ時間が必要だった。


けれど、誰にも文句のいわせないスターの誕生だった。



②偉大なる伝説のトップスター安蘭けいの下の二番手時代



これほどの「大物スター」の香りを放ちまくっていた柚希礼音はとんとん拍子に

トップスターになったと思いがちだが、何をやっても何を歌ってもイマイチ人気が出ない、という

暗黒の時代があった。

本人もそれを感じていたのかもしれないがちょっとぐれていた時期とでもいうのか。

眉も細く髪も長く、私は「星組のギャル男」と(短い間ではあるが)呼んでいた時期もあった。

ちょっとチャラい遊んでいる風の容姿で役柄も軽い役が多く回ってきていたせいもあるのかもしれない。


間違いなく歴史に残るであろう元星組トップスター安蘭けい

この絶対なるスターの存在で柚希の立場は大きく変わった。


安蘭さんは雪組から星組に組替えし、苦労してやっとトップスターになった

「苦労人」である。実力は誰よりもあるのになかなかタイミングが回ってこず、

当時を知る人は涙ながらに安蘭けい伝説を唱えるファンが多い。


私も例に漏れず、「あの時安蘭さんはねぇ・・・」と目を細めて昔を懐かしむ

「ちょっと知ってるからってつい語ってしまう」タカラヅカファンのひとりである。

今の北翔さんのイメージに少し似ているかも。


安蘭けいが偉大すぎたのかもしれない。


「人気」というバロメーターは時に人を傷つけるものだ。

自分で精一杯努力してついてくるのが「人気」でありついてこないものも「人気」。


耐えに耐えた安蘭けいはトップに花開き、熱狂的なファンを作った。

何をやらせてもうまいし、カリスマ性があって人柄も愛されていた。

そこに本人がいないのに話題に出る愛され人が安蘭けいだった。


その安蘭けいと自分を比べ、勝手にコンプレックスを感じる。

人としては当たり前だし当然である。柚希がそうだったかはインタビューで多少は

うかがえる発言もしていて、つらい時期だったんだろうな、と友達でもないのに、

ものすごく遠い人物なのにその立場だった柚希に勝手に同情してしまう、

迷惑なタカラヅカファンであった(私は)。


安蘭けいが眩しすぎて、偉大すぎて、柚希礼音は行き詰っているようにも見えた。

正直、この逸材スター柚希礼音が辞めてしまうのでは、と感じた公演もあった。

柚希さんが劣っていたのではなく、安蘭さんがすごすぎたのです。

それくらい距離のあったトップと二番手。8学年差もあるのだから仕方ない、キャリアが違うよ、と

なぐさめても、あの頃のちえさんは誰にもカバーできないほどつらかったのではないのかな。


「安蘭さんと私」という見えない壁に苦しんでいたと思う柚希は

突如目覚める。「ショーヴラン」という役に出会えるのだ。



③「ショーヴラン」



「スカーレットピンパーネル」初演。大作ミュージカル、主演安蘭けい遠野あすか

演出家小池修一郎。怖いくらいそろっていて誰もが大ヒットを疑っていなかった。


もちろん安蘭さんはうまかった。人の心に響く歌声、人の心に届く芝居。

主題歌「ひとかけらの勇気」は大人気ナンバーとなり、今でも再演希望の声は絶えない。


その時代に見ていたひとりとして思っていたこと。


「柚希礼音というスターを星組二番手として誰も認めていなかった」。


星組は安蘭さんのもの。安蘭さんのおかげで星組はもってる。

そんな空気が読めたし、劇場に行ってもそんな雰囲気が漂っていたと思う。

柚希礼音はそれを誰よりもわかっていたと思うし、タカラヅカファンって残酷だな、と

我ながら思う。だって、それを思っていたのは私もだから。


今、ただただ謝りたいと思う。

それはスカピン終演後にはすっごく失礼なことだと気づく。


「もしとうこさん辞めたら星組どうなるのかな?」


と思っていた観客の雰囲気を読んだのか。一発逆転、「柚希礼音:ショーヴラン」の誕生だ。


お芝居では誰よりもおいしい悪役で、ヒロインを主人公と取り合う。

ナンバーも超絶かっこよく、真っ黒な衣装はさらにその役を際立たせる。


終演後はしばらく立てなかった。

柚希礼音が「誰もが認める星組二番手男役」になった瞬間だった。


柚希礼音がショーブランだったのか、ショーヴランが柚希礼音だったのか。

感動は冷めやらず、涙が流れるほどの役者の誕生に立ち会えた喜びだった。


ちえ?いっつも安蘭さんの周りクルクル回ってるよね。


その評価をぶっ潰した。

柚希に二番手という羽根を与えたショーヴラン、私は映像に残ることを感謝した。



④トップスターになってから、そして柚希礼音が残してくれたもの



安蘭さんが宝塚を去った。残ったのは、柚希礼音と星組だった。

安蘭さんが残してくれたもの。無言で育てた新トップ、柚希礼音。


安蘭さんと学年差は8年だった。今でもびっくりする数字である。


そのキャリアは埋められない、その言葉から始まった柚希礼音体制の星組

それから6年です。さいたまスーパーアリーナを「中継場所」にさせるスターになりました。

動くレジェンド柚希礼音は本人はどう思っているかは多くは語らないスターだけれど、


無邪気で人懐っこい「ちえ」から包み込むような大きな翼をはやした「柚希礼音」に。


誰からも愛されるスターに。


誰もが認めるトップオブトップに。


どこに出しても自慢できる宝塚代表。


「ちえさんみたいになりたい」といわれる存在に。


きっと、10年後に映像で見ても「色あせることのないスター」であり続けるのでしょう。

運動会で大声で泣いちゃったりするかと思えば、あの安蘭さんに


「ちえは私の誇りです」


といわれる立場になった、柚希礼音。きっとWOWOWを見て、一番その言葉に泣いたのは

ちえさんかもしれない。いや、柚希礼音にその言葉を聞いてほしいです。

きっと、運動会の時と同じ、かそれ以上に「泣き虫なちえ」であってほしい。


立場は変われど、柚希礼音は柚希礼音であることを教えてくれて、

同じ名前でも人は変われる、無限の可能性を秘めていることを教えてくれた柚希礼音。



私たちはそんな柚希礼音が大好きで、あなたの舞台をずっと見ていた。

波が大きすぎて飲みこまれるんじゃないかという心配は無用だったんですね。


人は変われる。


自信がなくても輝ける。自分で切り開く、その勇気と根性。


それを実践して教えてくれた柚希礼音が好きなのかもな、と思います。